守口市立さくら小学校
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ZEB・LCCへの取り組みへページ遷移します。三方に戸建住宅が密集した敷地に、2校の小学校を統合する計画。既存敷地に建っていた交番と周辺に住む高齢者の寄り集まりスペースを取り込み、市民を含めたみんなの学校として設計を行った。
まちへの環境変化を抑え、まちのシンボルの継承を図る。100年以上前からまちを見守る三本のクスノキを起点とした、豊かな屋外広場をつくることで、共用部問わず内外一体となった学校全体が学びの場を目指した。児童が授業時間を問わず、それぞれの興味関心に従い、主体的に学ぶ環境となるように歩行空間だけの共用部をゼロにした。広場と木をふんだんに使用した内部が一体となり、都市部において気持ちの良い木に包まれた学びの場となった。
| 所在地 | 大阪府守口市東光町 |
|---|---|
| 竣工年月 | 2021.03 |
| 延床面積 | 10,316㎡ |
| 構造 | RC+W |
| 階数 | 3F |
| 施設用途 | 小学校 |
| 受賞 | 2021年度「おおさか環境にやさしい建築賞」商業施設その他部門賞 第16回キッズデザイン賞 優秀作品 特別賞(審査委員長特別賞) 第11回みどりのまちづくり賞 大阪府知事賞(ランドスケープデザイン部門) 2022年度 ウッドデザイン賞 ハートフルデザイン部門 入賞 2023年日本建築学会作品選集新人賞 2023年 日本建築学会 近畿支部新人賞 第42回「大阪都市景観建築賞(愛称:大阪まちなみ賞)」大阪府知事賞 令和5年度 優良学校施設表彰(最優秀賞) |
| 撮影者 | 松村芳治(1)(2)(3)(5)、株式会社伸和(4) |
プロジェクトストーリー
2層に抑えた校舎で空間を多様につなぎ
学校全体を学びの場に
プロポーザル方式でスタートした守口市の「さくら小学校」プロジェクト。
2校の統合事業となる今回の敷地は、既存の小学校跡地だけでなく、隣接し小学校と深いつながりのあった公民館・高齢者交流施設・幼稚園や交番の土地も取り込んだものとなりました。さくら小学校の計画では、2校の統合という以上に、そのような地域との深いつながりの歴史をいかに受け継ぐ場になり得るかが大きな課題となりました。
100年以上、学校と地域を見守り続けた3本のクスノキを大切に残し、アメーバのように大木を取り囲む2層校舎の本プロジェクト。多様な関係者との合意形成から、コロナ禍という想定外の事態まで、数々の壁をどう乗り越えたのか。昭和設計の設計チームに、プロジェクトの裏側と設計の醍醐味を聞きました。

複雑に絡み合い、高め合う用途
求められたのは「その街だけの最適解」
Q. 本プロジェクトはプロポーザルでの受注でしたが、当初はどのような状況だったのでしょうか。
髙木:守口市が求めていたのは、どこにでもある「横並びの学校」ではありませんでした。「その時・その場所でしか成り立たない最適解」です。計画地はもともと学校と地域の結びつきが非常に強いエリアで、敷地内には幼稚園や公民館、高齢者交流施設が同居する。さらに設計途中で交番の組み込みまで加わり、多種多様な機能が複雑に重なり合っていました。
これらを単なる「箱のパズル」としてはめ込んでも、建物は建ちます。しかしそれでは、この街に愛される場所にはならない。私たちは施設全体をひとつの「ワクワクする学びの場」として統合するというコンセプトを掲げ、プロポーザルに挑みました。

樹齢130年クスノキの大木を残す
「地域の記憶」となる大木を必ず残すための試行錯誤
Q. 敷地の中央にある立派な木を中心とした配置が印象的ですね。
北川:地域の記憶を次の世代に繋ぐために、樹齢130年を超えるクスノキを伐採せず残し、その木を中心に据えた「ふれあい広場」を計画しました。創出しました。
実は、この大樹を保存して広場を確保するために、3階建ての検討や2階建ての中での教室配置に細心の注意を払いました。限られた敷地の中で必要諸室を満たすだけでも難しいのですが、学校の中央の3本の大木があることは空間確保の面では非常に苦しい検討の連続でした。ただ、地域住民の方々や先生方と計8回のワークショップを重ねる中で、確信が生まれたんです。「この木が残る風景こそ、この街にとっての正解だ」と。130年の時間が積み重なったこの場所の力を活かすべきだと判断しました。

コストと技術の壁
意匠と構造が激突して生まれた「木造の大空間」
Q. 2階の普通教室は木造ですね。コストや技術面でのハードルはどう乗り越えたのでしょうか。
野田:都市部の中ですべてを木造にすると、コスト増に加えて法規制の壁にぶつかります。そこで1階をRC造、普通教室のある2階を木造とする混構造を採用しました。そのため木造部分の面積を限定し、木造部分をRC造で区切ることで都市部の中での木造をコストをぎりぎりまで抑えたうえで実現しました。
さらに難題だったのが、低学年の普通教室に求められた10m×10mの大空間です。柱を設けずに屋根を支えなければならない。部屋のサイズごとに木梁のデザインを変え、構造的に成立させつつ空間にメリハリを持たせる架構を検討しました。
「木を美しく見せたい」という意匠担当と、「安全とコストのバランスを取る」構造担当。細かな収まりを巡って社内で激しく意見をぶつけ合いました。ただ、その衝突があったからこそ、燃え代を見込んだ部材を「見せるべき場所」にだけ効果的に配置する最適なバランスにたどり着けた。妥協ではなく、双方が納得する最適解を見つけ出すプロセスだったと思います。

コロナ禍とGIGAスクール構想
予期せぬ事態が証明した「空間の力」
Q. 施工中には「1人1台タブレット(GIGAスクール構想)」の導入など、コロナを受けての予期せぬ事態もあったと伺いました。
山本:まさに施工中の急な決定でした。ただ、現場で柔軟に配線やコンセントの配置を調整し、大きな手戻りなく乗り切ることができました。
それ以上に印象深かったのはコロナ禍での出来事です。教室をフルオープンにできる設計や、換気に優れた中央の階段状ホール(メディアホール)、芸術広場の屋外舞台など、私たちが当初から目指していた「領域を曖昧にする」オープンな空間設計が、図らずも三密を避ける新しい教育スタイルにそのまま応えたのです。設計意図とは異なる文脈で空間が機能した瞬間でした。「出来上がった実空間としての学校は思わぬワクワクと出会いが内外問わず生まれる場となった」──そう実感しました。

不登校の子が来た 転入家庭が急増した
設計が生んだ「想定以上の成果」
Q. 完成後、どのような反響がありましたか?
山本:子供たちが自分で好きな居場所を選べるよう、1人でこもれる「デン」や小上がりなど、多様な空間を随所に設けました。その結果、不登校だった子供が学校に来るようになったという報告をいただいたのです。設計者として、これほど嬉しいフィードバックはありません。
さらに、この学校を目当てに引っ越してくるファミリー層が急増しました。守口市が政策として掲げていた「子育て世代の流入促進」が想定以上の成果を上げ、現在すでに増築工事が進んでいます。建築が街の人口動態まで変えうるのだという手応えを、このプロジェクトで得ることができました。
Q. 最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
山本:巨大な既存樹木の保存、大規模な木造設計、施工中のGIGA対応。社内外を含めて「初めてづくし」の挑戦でした。厳しい条件、短い工期、現場でのトラブル対応と苦労は尽きませんでしたが、それ以上に「自分たちが最高にワクワクする空間を形にする」という純粋な喜びがチーム全員を動かし続けました。
今後もお客様の複雑に絡み合った課題を解きほぐし、未来の子供たちや地域に愛され続ける建築を創り出していきたいです。

左から 構造設計部(主査) 野田 友輝、建築設計部(主査) 山本 和宏、建築設計部(主管) 北川拓哉、東京事務所(取締役) 高木秀晃









