兵庫Project 11

おやこのラウンジ Cnopp(クノップ)

子育てを支援する、おやこの居場所となるラウンジ

学校法人あけぼの学院が地域貢献の新たなかたちとして開設した「おやこのラウンジ Cnopp(クノップ)」は、保育専門スタッフが常駐し、就学前親子を対象とする子育て支援施設である。

計画の背景には、戦後の混乱期に市長の要請を受け、私財を投じて創立された立花愛の園幼稚園の歴史がある。創立から2万人を超える卒園児を輩出してきた同園は、地域における子育て支援の中核的な存在として発展を続けてきた。しかし、コロナ禍を契機に子育て環境は大きく様変わりした。人との関わりが制限され、孤立し、子育てに悩む保護者が増加。そうした状況を目の当たりにし、「親子が安心して集い、子育てを語り合える場所をつくりたい」という理事長の強い想いから本計画は始動した。

1年に渡る事例見学を通し、園から求められた要素は「気軽に立ち寄れる開放性」「子どもと行きたくなる温かい居住性」「様々なイベントに対応できる柔軟性」であり、これらを併せ持つ、『子育て世代を支えるラウンジ』を実現するため、建物は木造とし、明るく開放的なファサード、インテリアと構造が一体となった構成、木のぬくもりを感じられる空間を計画した。

木造化にあたり、既存幼稚園との間にRCコアを配し、防火規制に係る別棟とした。RCコアは壁式構造で地震による水平力を、木造ラーメン構造は鉛直力を負担し、周辺への音漏れに配慮しつつ、自由度の高い開放的な居住空間を可能としている。

幼少期から親子で本と触れ合える時間を大事にしたい、という想いから生まれた壁一面のブックライブラリーは、やわらかな光が差込み自然のぬくもりを感じられる空間とした。また、子どもの遊ぶ様子を見守りながらソファやテーブル席でゆったり過ごせるカフェスペース、畳やマットなど小さな子どもが安心して過ごし、保護者同士が自然と会話を交わせる安らぎの場も計画した。

本施設は、園の長年の実践に基づく知見と、建築が果たすべき社会的役割が結びついた取り組みとして、地域に必要とされる居場所になることを期待する。

建築設計部
 松本 祥幸

兵庫県尼崎市立花町三丁目20番27号Google Map
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