沿道に顔を出し、戸建て住宅の閑静な街並みと調和する低層の校舎
Photo 松村 芳治既存校舎を使いながらの工事のため、限られた空地の利用を工夫し4年弱の期間を掛け段階的に建替えを行った
Photo 松村 芳治周辺の閑静な住宅地に配慮して、普通教室は中庭側に開く計画とした。バルコニーは普段使いの外廊下となる
Photo 松村 芳治フルオープン可能な建具で教室と一体化できる廊下には、クラス専用のベンチ・ロッカー・手洗いを設置。教室の反対側に外廊下があるため、雨天時以外は教室の拡張空間となる
Photo 松村 芳治メディアセンター前オープンスペース
Photo 松村 芳治
学校の中心にメディアセンターを配置
兵庫Project 1
芦屋市立山手中学校
山手中学校らしさの継承と未来志向の学校づくり
長い年月を経て深い緑と一体化した校舎群と、山手の街並みの向こうに広がる海。2015年の夏、初めて訪れた山手中学校で強く印象に残った風景です。急斜面の森を縫うように校舎の間を繋ぐブリッジを歩き進むと、森の奥にひっそり建つ離れの校舎から生徒たちの合奏が心地よく響いてきました。校舎を上ると今度は一気に視界が開き、山手らしい海への眺望が目の前に広がりました。築60年以上が経過した山手中学校は、老朽化により全面的な建替えが決定しました。
新しい山手中学校は、メディアセンターを中心に配置した「主体的・対話的で深い学び」の連続した活動が行いやすい学習環境づくりで、思考力や実践力など「生き抜く力」を育む未来志向の学校づくりを目指しました。
設計中は様々なハードルが待ち受けていました。既存校舎を使いながらの全面建替えのため、限られた空地に建物をなんとか配置し、段階的に工事ができるように工夫する必要がありました。また高さ規制が厳しくなり、現在では既存校舎と同等の高さ・階数の建物は建てられません。限られた設計期間のなか何度もスタディし、解決しては新たに発生する困難な条件を一つひとつクリアしていきました。
初めて訪れてから6年となる2021年、ようやく山手中学校は完成しました。山手らしい海を望む校舎と、新たに植えた木々が再び深い緑となって一体化するころ、この山手中学校から巣立った子ども達が芦屋の未来を担う世代として広く活躍していることを願っています。
建築設計部 執行役員
高木 秀晃