岡本太郎オリジナルの意匠は変えず、2018年に48年ぶりに内部が一般公開された “太陽の塔”
写真提供:大阪府照明や音響などの演出は最新の技術を駆使、再び命を吹き込み蘇った内部の展示空間
写真提供:大阪府左腕内部には大阪万博当時の避難階段があり、鉄骨フレームとも塗装など含めて一切手を加えることなく展示空間としての演出を行った
写真提供:大阪府耐震補強と避難安全性の確保をメインテーマに練り上げた改修計画。関連する内容はすべて現行法規をクリアし“工作物”から“建築物”に変えることに成功した
中も外も意匠を変えないことが絶対条件の耐震補強は、数年かけてスタディしシンプルだがすべてを解決できる方法にたどり着いた
太陽の塔
芸術作品を蘇らせて未来につなぐ
太陽の塔は、1970年に開催の大阪万博のシンボルゾーンのテーマ館の一部として岡本太郎のデザインにより作られました。閉幕後、撤去される予定でしたが、反対運動が起こり撤去は免れました。しかし、撤去が前提であったことから、人の立入りを前提としない工作物として保存されることになりました。
長く立入りができなかった太陽の塔を“誰もが自由に出入りできる展示施設にかえる!!”このミッションを聞いたとき、本当に実現するのか??と思ってしまいました。階数は?火災時の避難は…?クリアする条件は多く、私の専門の構造では、60m以上の超高層でありながらも通常のビルとは異なる難解な構造解析が待っていました。
技術的に特に触れたい事は、火災時の安全性の確保と耐震補強です。火災時の安全は最新のシミュレーション技術を駆使し、避難時の安全性を確認し、現在の建築法規に合致するよう計画しました。
耐震補強は、外観を変えずに行う事を大原則に、内部からの補強に限定しました。首部分は鉄骨フレームを挿入し、胴体にあたる部分はコンクリートを内側に増す補強を行っています。その他にも様々な条件をクリアし、内部再生も行い、2018年3月に展示施設として生まれ変わりました。
定番の太陽の塔の外観写真は、ランドスケープの工夫により、周りの人は映らないように工夫している事や、新しくプロローグ空間に設けた窓から見える二つの顔(黄金の顔・太陽の顔)、は額縁に入れた絵のように神秘的に見えることなど、新しい見どころも満載なので、皆さんぜひ訪れてみてください。
「太陽の塔」オフィシャルサイト(https://taiyounotou-expo70.jp)
東京事務所 東京構造設計室
浅野 康弘